宿泊施設で高まる「におい対策」への意識
インバウンド回復と共に見直したい快適空間づくりコロナ禍を経て外国人観光客が戻り、宿泊施設の稼働率も回復しつつあります。それに伴い、「部屋のにおい」に関する声も増えてきました。

香水や体臭、電子タバコ、飲食物のにおいなど、国や文化によって「心地よさ」の感じ方が異なる中、どんなお客様にも快適に過ごしてもらうための"においマネジメント"が注目されています。
宿泊客の意識調査結果
パナソニック株式会社空質空調社が2024 年に実施した「宿泊施設とニオイに関する意識・実態調査2024」では、泊まりたくない宿泊施設の特徴」として最も多かったのが「部屋がにおう」でした。
(※パナソニック株式会社空質空調社調べ, 2024)
さらに「これまでに、ホテル・旅館の客室でニオイが気になったことがあるか」という質問に対しては、どの年代でも70%以上の人が「気になったことがある」と回答しており、においの問題は全年代に共通する関心事であることがわかります。
(※パナソニック株式会社空質空調社調べ, 2024)
そして「これまでに、ホテル・旅館の客室で気になったことがあるニオイ」という質問では、カビ臭などに加え前の利用者のニオイが消えていない点も多く見受けられます。
(※パナソニック株式会社空質空調社調べ, 2024)
また、「宿泊施設におけるにおい調査」という論文では以下のように述べられています。
国内外の宿泊施設に対して、においに関するアンケート調査を実施した。実際に回答を得られたのは、国内外合わせて計186件であった。そのうち、全体の約90%の宿泊施設が何らかのにおいの問題でゲストから苦情を受けたことがあった。また、宿泊施設の苦情において約80%は客室における苦情であった。においの質については、「タバコ臭」「香水・アロマ臭」「体臭・汗臭」が原因となっていた。
-伊牟田 凌雅, 光田 恵, 岩橋 尊嗣, 棚村 壽三, 中村 皇紀- 宿泊施設におけるにおい調査
香水や体臭だけでなく「タバコ臭」もニオイ問題の原因として挙げられています。
SNS や口コミサイトでも「部屋がタバコ臭かった」「前の宿泊者の香水が強かった」などのコメントが投稿されることも珍しくありません。清潔さと同様、空気の質は施設全体の印象を左右する大切な要素になっています。
宿泊空間に残る"におい"の正体とは?
においの正体は化学物質で、その種類は40万種あると言われています。香水や整髪料、汗や皮脂、タバコの煙など、空気中に広がるだけでなく、壁紙やカーテン、エアコン内部にまで付着しやすい性質があります。
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タバコ臭
宿泊施設の多くは禁煙室、喫煙室と客室を分けています。しかし、すべてのお客様がルールを守るとは限りません。禁煙室で電子タバコを吸ってしまうだけでなく、ベランダや屋外で喫煙して体ににおいが付着したまま客室に戻る可能性も考えられます。
また、普段喫煙している方ですとその場では喫煙しなかったとしても、鞄や上着にしみついたタバコ臭がクローゼットの中で広がってしまうケースも見受けられます。
タバコ臭は一度染み付いてしまうと短時間で完全に除去することは難しく、次のお客様への影響が懸念されます。
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香水臭
海外からのお客様だけでなく、最近では強い香りの香水を使用する日本人の方も増えています。香水の場合、床やベッドにうっかりこぼしてしまった例も少なくありません。また、リラックスのためにとお香を焚かれるお客様もおり、お香の香りがカーテンや壁紙にしみこんでしまうケースもあります。
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カビ臭
湿度の高い日本では発生しやすいカビ臭。客室数が多い施設では一部屋ずつのエアコン内部清掃をこまめに行うことは難しく、内部に発生したカビ臭が運転時に部屋中へ広がることがあります。エアコン内部に発生したカビのにおいは一度発生してしまうと完全に取り除くことが難しいのが現状です。
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体臭
インバウンドで海外からのお客様が増え、文化や体質が異なるかたが宿泊するケースも増えています。日常ではあまり嗅ぐことがないにおいを感じると敏感に嗅ぎ取ってしまいます。
まずは"即時消臭"でトラブルを防ぐ
チェックアウト後の短い清掃時間で、においをできるだけ早く抑えたい。そんなときに便利なのが、VOC(揮発性成分)に対応した「デオドールVOC用消臭スプレー」です。
化学的ににおい成分を除去するタイプのスプレーを使えば、香水やタバコのにおいを短時間で軽減できます。
また、布やカーペットなどに染み込んだにおいには、スプレー後、軽く拭き取るとより効果的です。清掃スタッフの判断でサッと対応できる即効性が、現場では重宝されています。
日常的な"消臭運用"で差がつく空気づくり
応急的な対処に加え、日常的に「においをためない仕組み」を整えることも大切です。一方で宿泊施設の各部屋に消臭機器やディフューザーを常時設置は、盗難や破損の懸念もあるため難しいのが現状です。
そこでエアコンに取り付けて「機器が見えない消臭」ができる「クローバー」がおすすめ。ルームエアコンの吸込口や、全館一括空調の場合は吹出口にクローバーを設置するのみ。エアコンの風とともに自然と消臭成分が部屋中に拡がります。
クローバーは見えない、手の届かない位置に設置しているので、お部屋で過ごすお客様には消臭していることは気づかれずに空気づくりができます。
日本デオドールが使用している消臭剤は「フィトンチッド」の効果を導入した森林浴消臭。森の空気が自然と浄化されるように植物精油に含まれるフィトンチッドが部屋のニオイを消臭し、さらに快適な空間になるように木々や植物の香りがふんわり自然に香ることで、心地よい空間へと変わります。
壁・床に染みついたにおいには"洗浄型"ケアを
長年の積み重ねで染みついたにおいは、スプレーだけでは取り切れません。
クロスやカーペット、家具などの表面に残ったにおい成分は、「エコーズ」などの洗浄型消臭剤を用いた拭き取り清掃で除去するのが効果的です。
消臭対策は「空気の品質管理」
におい対策というと、つい後回しにされがちですが、実は空気の管理は施設運営の"品質保証"のひとつです。見た目の清潔感と同じくらい、空気の清潔感が宿泊者の満足度を左右します。
小さな工夫の積み重ねで、「また泊まりたい」と感じてもらえる快適な空間を維持することが、これからの宿泊業には欠かせません。
まとめ
多様な文化・嗜好の宿泊者を迎える今、においの感じ方もさまざまです。より「においが無い空間」を目指すことは大切ですが、「無臭にする」ということは非常に難しく、そして嫌なにおいほど敏感に察知しやすくなります。
大切なのは「においをゼロにする」よりも、「不快なにおいを感じさせない」こと。その空間で息をしていても嫌な気持ちにならないことで安心感を与えるおもてなしに繋がります。
まずは客室清掃時の即時消臭から始め、常時消臭・定期洗浄と段階的に整備していくことで、無理のない運用が可能です。
においの少ない快適な空間づくりは、施設の印象を確実に高め、再来訪や口コミ評価にもつながっていくでしょう。
(更新日:2025年11月 7日)
